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医療難民の増大懸念

自由診療、領域拡大か

こうした施策の延長戦上には、どんな医療の現実が描かれるのか。
さいたま市で胃腸科肛門科の診療所を運営する多田智裕医師は、次のようにシミュレーションする。
  ×  ×  ×
とある男性会社員(50)は、初期とみられる大腸がんの手術を受けることになった。
主治医は費用などをこう説明した。
「通常の開腹手術なら保険適用で20万円。これだけでも大腸がんは切除できる。でも、転移の可能性があるリンパ節を完全に除去できるかは保証できない。残してしまうかもしれません」

続けて、もうひとつの選択肢を紹介する。
「最新鋭の手術機材を使えば、リンパ節を正確に除去できる。こちらは保険外併用療養。自己負担の150万円が加わって、計170万円だ」

男性は悩む。
「米国の民間のがん保険会社から勧誘があったけど、保険料が月1万円で高くて、断ってしまった。加入しておけば、よかった」

医師は「この最新鋭の手術機材に公的保険が適用されれば、費用は約60万円に抑えられる。だが、国は患者の自助を前提に新しい技術が生まれても、公的保険をほぼ適用しない。お気の毒だが」となぐさめた。
  ×  ×  ×
多田医師は「求める医療をいつでもどこでも、お金の心配をせず受けられることが幻想になりつつある。所得により医療サービスの差が広がって、良質な医療は受けにくくなる」と危ぶむ。

根幹にあるのが、国の診療報酬の抑制だ。
診療報酬は保険適用される医療行為に払われる。
このため、経営の苦しい医療機関は保険適用外の自由診療を増やす傾向にあるという。

「大腸の内視鏡検査は保険適用で、1日15人前後の患者を診ないと割が合わない。
医師も体力的に厳しい。保険適用にせず自由診療にし、診療代を高くすれば、4,5人の患者ですむ。
患者は減るが、討ち死に覚悟で自由診療に打って出る医師は増えている。
もちろん、経済的余裕のない患者は受診できない」
超高齢化社会を迎える中、財源が限られている以上、こうした事態は諦めるしかないのか。

全日本民主医療機関連合会(民医連)の藤末衛(まもる)会長は、組合管掌健康保険(組合健保)の保険料率アップを提起する。

労働省などの資料によると、外来受診が無料のドイツでは、保険料の負担割合が給与の15.5%なのに対し、日本の組合健保は平均で8.6%と軽い。中小企業中心の協会けんぽでも10%だ。
「とりわけ、日本の大企業の保険負担は国際的にも小さい。せめて、協会けんぽのレベルまでは引き上げるべきだ」

国民医療費は年々増加し、37兆4000億円に上る。うち、公費負担の割合は38.1%で増加傾向をたどる一方で、事業主や被保険者の保険料の割合は5割を切り、財源は厳しくなる一方だ。

前出の二木学長は国民会議の報告書に記された「保険料は負担能力に応じて求め、格差是正に取り組むべきだ」という指摘に注目する。
無職の人や非正規労働者らが加入する国民健康保険は、財政的に弱体化している。
このため、負担能力のある組合健保に支援してもらおうという趣旨だ。

医療難民を増やさないためには「これを政治が実現できるかがカギになる」と話す。
「経済的理由による受診抑制を防がなくては。医療格差をなくさなくてはならない」

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北陸中日新聞(平成25年9月27日:朝刊)


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2013/09/28(土) 22:34 | | #[ 編集]
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